ロタウイルス

ロタウイルス感染症は、乳幼児に激しい下痢と嘔吐を引き起こす代表的な胃腸炎です。特に冬から春にかけて流行し、保育所や幼稚園などでの集団感染もよくみられます。その特徴的な白色の水様便から「白色便性下痢症」とも呼ばれ、小さなお子さんにとっては脱水症状を起こしやすい注意が必要な感染症です。

5歳までにほぼ全ての子どもが感染するとされており、初回感染時には特に重篤な症状を示すことが多くあります。近年ワクチンが導入されたことで患者数は減少していますが、依然として乳幼児の急性胃腸炎の重要な原因の一つです。この記事では、ロタウイルス感染症の特徴、症状、治療について詳しく解説し、当クリニックでの対応についてもご紹介します。

ロタウイルス感染症とは

ウイルスの特徴と感染力

ロタウイルスは、胃腸炎を引き起こすウイルスの中でも特に感染力が強いことで知られています。非常に少量のウイルスでも感染が成立し、感染者の便1グラム中には1000億個以上のウイルスが含まれることもあります。

このウイルスは環境中での生存力も強く、室温で数日から数週間生存することができます。また、一般的なアルコール系消毒薬に対しても抵抗性を示すため、感染対策には特別な注意が必要です。

流行時期と年齢分布

日本では例年11月頃から流行が始まり、1月から4月にかけてピークを迎えます。この時期は乾燥した気候でウイルスが生存しやすく、また室内で過ごす時間が長くなることも感染拡大の要因となります。

感染は主に生後6か月から2歳の乳幼児に多くみられ、特に初回感染時には重篤な症状を示すことが多くあります。年長児や成人も感染しますが、症状は比較的軽微で、軽い下痢程度で済むことがほとんどです。

感染経路について

ロタウイルスの主な感染経路は糞口感染です。感染者の便に含まれるウイルスが、直接または間接的に口から体内に入ることで感染が成立します。オムツ交換時の手洗い不十分や、汚染された手で食べ物を触ることが感染の原因となります。

また、嘔吐物からの飛沫感染や、汚染された環境表面からの接触感染も起こります。保育所などでは、おもちゃや床、手すりなどを介した感染が広がりやすくなります。

症状と経過について

典型的な症状の特徴

ロタウイルス感染症の最も特徴的な症状は、白色から淡黄色の水様下痢です。この特徴的な便の色から「白色便性下痢症」とも呼ばれます。下痢は1日に10回以上の頻回な水様便で、米のとぎ汁のような外観を示すことが多くあります。

激しい嘔吐も主要な症状の一つで、しばしば下痢に先行して現れます。嘔吐は突然始まることが多く、水分摂取後すぐに嘔吐してしまうため、脱水症状を助長する要因となります。

全身症状と経過

38度から39度の発熱を伴うことが多く、お子さんは全身の倦怠感や食欲不振を示します。特に乳幼児では、普段より機嫌が悪くなったり、ぐったりとした様子を示したりすることがあります。

症状は通常2日から3日でピークを迎え、その後徐々に改善していきます。下痢は5日から7日程度続くことが多く、完全に正常な便に戻るまでには1週間から10日程度かかることもあります。

脱水症状の兆候

ロタウイルス感染症で最も注意すべきは脱水症状です。頻回な下痢と嘔吐により、体内の水分と電解質が急速に失われます。軽度の脱水では、口の中が乾燥したり、尿量が減少したりします。

中等度以上の脱水になると、皮膚の張りがなくなり、目がくぼんだり、泣いても涙が出なくなったりします。さらに重篤になると、ぐったりして反応が鈍くなり、緊急の治療が必要な状態となります。

診断と検査について

臨床診断

ロタウイルス感染症の診断は、特徴的な白色水様便と激しい嘔吐、流行時期を考慮した臨床診断が基本となります。特に冬から春にかけての流行期に、乳幼児がこれらの症状を示した場合は、ロタウイルス感染症を強く疑います。

当クリニックでは、お子さんの月齢、症状の経過、便の性状、水分摂取状況などを詳しくお聞きし、脱水の程度を含めて総合的に評価いたします。

迅速診断検査

ロタウイルスの迅速診断キットが利用可能で、便検体から約15分で結果が判明します。この検査により確定診断が可能ですが、症状が典型的で流行時期である場合は、検査を行わずに臨床診断で治療を開始することもあります。

検査は主に集団感染の確認や、他の原因による胃腸炎との鑑別が必要な場合に実施されます。治療方針への影響は限定的ですが、感染対策の観点から有用な情報となります。

脱水の評価

脱水の程度を正確に評価することは、治療方針を決定する上で非常に重要です。体重減少率、皮膚の張り、粘膜の湿潤状態、尿量、全身状態などを総合的に評価し、軽度、中等度、重度の脱水に分類します。

血液検査により電解質バランスや腎機能を確認することもありますが、軽症例では必ずしも必要ありません。

治療方法について

水分・電解質補給療法

ロタウイルス感染症の治療は、失われた水分と電解質を補う補液療法が中心となります。軽度の脱水であれば、経口補水液による経口補液療法が第一選択となります。

経口補水液は、水分と電解質のバランスが適切に調整されており、下痢による損失を効率的に補うことができます。少量ずつ頻回に与えることがポイントで、一度に大量に飲ませると嘔吐を誘発することがあります。

点滴治療

中等度以上の脱水や、経口摂取が困難な場合は、点滴による静脈内補液が必要になります。電解質のバランスを考慮した輸液を行い、脱水の改善を図ります。

重篤な脱水症状がある場合は、入院による集中的な治療が必要になることもあります。特に乳児では脱水の進行が早いため、早期の医療機関受診が重要です。

対症療法と薬物治療

下痢に対する止痢薬の使用は、一般的には推奨されません。これは、ウイルスの排出を妨げ、症状を長引かせる可能性があるためです。発熱に対しては、解熱薬を適切に使用し、お子さんの苦痛を和らげます。

プロバイオティクス(乳酸菌製剤)の投与により、下痢の期間短縮や症状軽減効果が期待できることがあります。また、亜鉛製剤の投与も下痢の改善に有効とされています。

栄養管理

症状が改善してきたら、徐々に通常の食事に戻していきます。最初は消化の良い食品から始め、脂肪分の多い食品や乳製品、刺激物は避けることが推奨されます。

母乳栄養の乳児では、母乳の継続が推奨されます。人工栄養の場合は、一時的に薄めたミルクから始めることもありますが、早期の通常濃度への復帰が重要です。

予防について

ワクチン接種

ロタウイルス感染症の最も効果的な予防方法は、ワクチン接種です。現在、2種類の経口ワクチンが利用可能で、生後2か月から接種を開始します。

ワクチンは重症化の予防に特に効果的で、接種により入院を要するような重篤な症状を大幅に減らすことができます。接種スケジュールについては、当クリニックでご相談の上、接種が可能な小児科をご紹介いたします。

感染対策

手洗いの徹底が最も重要な感染予防策です。特にオムツ交換後や食事前の手洗いは、石鹸と流水で30秒以上かけて丁寧に行いましょう。アルコール系消毒薬は効果が限定的なため、手洗いを基本とします。

汚染された衣類や寝具は、他の洗濯物と分けて洗濯し、可能であれば熱湯消毒や塩素系漂白剤での消毒を行います。環境の清拭には、塩素系消毒薬が効果的です。

集団感染の予防

保育所や幼稚園では、感染者の早期発見と適切な対応が重要です。症状のあるお子さんは、症状が治まってから24時間から48時間経過するまで登園を控えることが推奨されます。

施設内での手洗い設備の充実や、おもちゃの定期的な消毒、適切な排便処理なども感染拡大防止に効果的です。

当院での対応

診断と重症度評価

当院では、ロタウイルス感染症が疑われるお子さんに対して、症状の詳細な評価と脱水の程度を適切に判断いたします。必要に応じて迅速診断検査も実施し、確実な診断に努めています。

特に脱水症状の評価に重点を置き、経口補液療法の可能性や点滴治療の必要性について慎重に判断いたします。保護者の方には、自宅での観察ポイントについても詳しくご説明します。

治療とサポート

軽症例では、経口補水液の適切な与え方や、食事再開のタイミングについて具体的にご指導いたします。市販の経口補水液の選び方や、手作りする場合のレシピもお伝えします。

重症例や脱水が進行している場合は、点滴治療や入院治療の手配を迅速に行います。お子さんの安全を最優先に考えた適切な医療を提供いたします。

予防接種と感染対策指導

ロタウイルスワクチンの接種スケジュールについてご相談いただけます。接種時期や他のワクチンとの同時接種についても詳しくご説明いたします。

また、家庭内感染の防止や保育所復帰のタイミングについても具体的にご指導いたします。兄弟姉妹への感染予防策についても詳しくお話しします。

まとめ

ロタウイルス感染症は、乳幼児にとって注意すべき胃腸炎です。激しい下痢と嘔吐により脱水症状を起こしやすく、適切な水分補給が重要になります。

白色の水様下痢、激しい嘔吐、発熱などの症状がみられた場合は、早めに当院にご相談ください。当院では、ロタウイルス感染症の診断から治療、予防まで総合的にサポートいたします。お子さんの健康と安全を守るため、いつでもお気軽にご相談ください。

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