脳梗塞

脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳組織に酸素と栄養が供給されなくなり、脳細胞が壊死してしまう病気です。日本人の死因第4位を占める重大な疾患であり、一命を取り留めても後遺症が残ることがあり、患者さんとご家族の生活に大きな影響を与えます。

高齢化社会の進展とともに患者数は増加傾向にあり、生活習慣病の管理不足が主な原因となっています。しかし、適切な予防策と早期発見により発症リスクを大幅に減らすことができ、万が一発症した場合でも迅速な対応により症状を軽減できる可能性があります。この記事では、脳梗塞の原因、症状、診断方法、治療について詳しく解説し、当クリニックでの対応についてもご紹介します。

脳梗塞とは

発症のメカニズム

脳梗塞は、脳血管が血栓や塞栓により閉塞することで発症します。血流が遮断された脳組織は、酸素と栄養の供給が断たれ、時間の経過とともに不可逆的な損傷を受けます。

脳組織は他の臓器と比べて酸素消費量が多く、血流停止に対して極めて脆弱です。完全に血流が止まった場合、数分以内に脳細胞の死滅が始まり、数時間以内に広範囲の脳梗塞が完成してしまいます。

脳梗塞の分類

脳梗塞は発症メカニズムにより、血栓性、塞栓性、血行力学性に分類されます。血栓性梗塞は動脈硬化により狭くなった血管に血栓ができることで起こり、塞栓性梗塞は心房細動などにより心臓で形成された血栓が脳血管に飛んで詰まることで発症します。

病型により治療方針が異なるため、正確な診断が重要です。また、梗塞の部位により症状が大きく異なり、大脳皮質、基底核、脳幹、小脳などの損傷部位に応じた症状が現れます。

症状について

急性期の症状

脳梗塞の症状は突然現れることが多く、「いつもと違う」という異変から始まります。最も典型的な症状は、顔面や手足の麻痺、言語障害、意識障害です。

片麻痺では体の左右どちらか一方の手足に力が入らなくなり、顔面では口角が下がったり、よだれが出たりします。言語障害では、ろれつが回らない構音障害と、言葉が出ない失語症があります。

FAST徴候

脳梗塞の早期発見には、FAST徴候の確認が重要です。Face(顔の麻痺)、Arms(腕の麻痺)、Speech(言語障害)、Time(時間)の頭文字を取ったもので、これらの症状が一つでも認められた場合は緊急性が高い状態です。

顔では笑顔を作らせて口角の左右差を確認し、腕では両手を前に伸ばして片方が下がらないかを見ます。言語では簡単な文章を話してもらい、呂律や内容を確認します。

その他の症状

梗塞部位により、めまい、嘔吐、歩行困難、視野障害、嚥下障害などの症状も現れます。小脳梗塞では激しいめまいと歩行障害が主症状となり、脳幹梗塞では意識障害や呼吸障害を伴うことがあります。

症状は段階的に進行することもあれば、急激に悪化することもあります。軽微な症状でも脳梗塞の可能性があるため、早期の医療機関受診が重要です。

一過性脳虚血発作(TIA)

一過性脳虚血発作は、脳梗塞の前兆として重要な病態です。脳梗塞と同様の症状が現れますが、24時間以内(多くは数分から数時間)で完全に回復します。

TIAは脳梗塞の警告サインであり、48時間以内に本格的な脳梗塞を発症するリスクが高いとされています。症状が軽快したからといって安心せず、速やかに医療機関を受診することが重要です。

危険因子について

生活習慣病との関連

脳梗塞の最大の危険因子は生活習慣病です。高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動などは、いずれも脳梗塞のリスクを大幅に増加させます。

高血圧は動脈硬化を進行させ、血管壁を傷つけることで血栓形成を促進します。糖尿病は血管内皮機能を障害し、血液の粘性を高めます。脂質異常症は動脈硬化の直接的な原因となります。

生活習慣要因

喫煙は血管収縮と血栓形成を促進し、脳梗塞リスクを2倍から3倍増加させます。過度の飲酒も血圧上昇や心房細動の原因となります。

運動不足、肥満、ストレスなども間接的に脳梗塞のリスクを高めます。これらの要因は相互に関連しており、包括的な生活習慣の改善が必要です。

加齢と性差

加齢は避けることのできない危険因子で、60歳以降に発症リスクが急激に増加します。男性では50代から、女性では閉経後にリスクが高まる傾向があります。

家族歴も重要な要因で、血縁者に脳梗塞の既往がある場合は注意深い管理が必要です。

診断について

画像診断の重要性

脳梗塞の診断には、CTやMRI検査が不可欠です。CT検査では急性期の脳出血との鑑別が可能で、MRI検査では早期の脳梗塞の描出に優れています。

DWI(拡散強調画像)では発症後数分以内の超急性期梗塞も検出可能で、早期診断に革命をもたらしました。血管撮影により閉塞血管の部位と程度を正確に把握できます。

血液検査と心電図

血液検査では血糖値、電解質、腎機能、凝固能などを確認し、治療方針の決定に重要な情報を得ます。心電図検査では心房細動などの不整脈の有無を確認します。

また、感染症や脱水などの脳梗塞を誘発する要因の検索も重要です。

治療について

急性期治療

脳梗塞の急性期治療は「時間との勝負」です。発症から4.5時間以内であれば、血栓溶解療法(t-PA治療)により血栓を溶かし、血流を再開通させることができます。

より重篤な場合は、カテーテルを用いた血管内治療により直接血栓を除去します。これらの治療により、後遺症を大幅に軽減できる可能性があります。

急性期管理

急性期には全身管理も重要で、血圧、血糖値、体温の適切な管理を行います。嚥下機能の評価により誤嚥性肺炎を予防し、早期離床により合併症を防ぎます。

抗血小板薬や抗凝固薬による再発予防治療も、病型に応じて慎重に開始します。

リハビリテーション

急性期を過ぎると、機能回復を目指したリハビリテーションが重要になります。理学療法、作業療法、言語療法を組み合わせ、失われた機能の回復を図ります。

リハビリテーションは発症早期から開始することで、より良い機能回復が期待できます。

予防について

生活習慣病の管理

脳梗塞の予防で最も重要なのは、生活習慣病の適切な管理です。血圧、血糖、コレステロール値を目標値内にコントロールすることで、発症リスクを大幅に減少させることができます。

定期的な健康診断により、これらの数値を把握し、異常があれば早期に治療を開始することが重要です。

生活習慣の改善

禁煙は脳梗塞予防において極めて重要で、禁煙により2年から4年でリスクが大幅に低下します。適度な運動、バランスの取れた食事、適正体重の維持も効果的です。

ストレス管理と十分な睡眠も、血圧や血糖値の安定に寄与します。

薬物による予防

高リスク患者さんでは、抗血小板薬や抗凝固薬による薬物予防も検討されます。ただし、出血リスクとのバランスを考慮した慎重な判断が必要です。

当院での対応

危険因子の評価と管理

当院では、脳梗塞の危険因子となる生活習慣病の総合的な管理を行います。定期的な検査により血圧、血糖、脂質の状態を監視し、目標値の達成を目指します。

心電図検査により心房細動などの不整脈を早期発見し、適切な治療を行います。また、頸動脈エコー検査により動脈硬化の程度を評価し、リスク層別化を行います。

予防指導とサポート

個々の患者さんのリスクプロファイルに応じた具体的な予防策をご提案いたします。食事指導、運動療法、禁煙支援など、実践可能な改善策を一緒に考えます。

薬物治療が必要な場合は、副作用に注意しながら適切な薬剤を選択し、定期的な効果判定を行います。

緊急時対応

脳梗塞が疑われる症状が現れた場合は、迅速な初期評価を行い、専門医療機関への紹介を速やかに手配いたします。患者さんとご家族には、緊急時の対応方法についても詳しくご説明いたします。

まとめ

脳梗塞は重篤な疾患ですが、適切な予防策により発症リスクを大幅に減らすことができます。生活習慣病の管理と生活習慣の改善が予防の鍵となります。

突然の手足の麻痺、言語障害、意識障害などの症状がみられた場合は、緊急性が高い状態です。また、健康診断で異常を指摘された場合や、脳梗塞の危険因子をお持ちの方は、定期的な管理のために当院にご相談ください。患者さんの健康維持と脳梗塞予防のため、総合的なサポートを提供いたします。

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