アデノウイルス

アデノウイルス感染症は、日常的によくみられる感染症の一つですが、実は非常に多彩な症状を引き起こす厄介な病気でもあります。「プール熱」や「はやり目」といった名前で知られる症状から、風邪のような軽い症状まで、感染する部位や型によって様々な病気を起こすのが特徴です。

特に夏場のプールでの感染や、保育所や学校での集団感染がよく問題となります。また、一度感染すると症状が長引きやすく、完全に回復するまでに時間がかかることも多い感染症です。この記事では、アデノウイルス感染症の種類、症状、診断方法、治療について詳しく解説し、当クリニックでの対応についてもご紹介します。

アデノウイルス感染症とは

ウイルスの特徴

アデノウイルスは、現在までに50種類以上の型が確認されている大きなウイルスファミリーです。それぞれの型によって引き起こす症状や感染する部位が異なるため、同じアデノウイルスでありながら全く違った病気を起こすことがあります。

このウイルスは非常に安定性が高く、環境中でも長時間生存できるという特徴があります。アルコール系の消毒薬に対して抵抗性を示すため、感染対策には特別な注意が必要です。また、一度感染しても他の型に対する免疫は得られないため、異なる型による再感染が起こることもあります。

主な感染症の種類

アデノウイルスが引き起こす代表的な感染症には、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎(はやり目)、胃腸炎などがあります。咽頭結膜熱は主に3型、4型、7型によって起こり、高熱とのどの痛み、目の充血が特徴的です。

流行性角結膜炎は8型、19型、37型などによって引き起こされ、強い目の症状が現れます。胃腸炎型は40型、41型が原因となることが多く、特に乳幼児に下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こします。

感染経路について

アデノウイルスの感染経路は多様で、飛沫感染、接触感染、糞口感染などがあります。プールでの感染が有名ですが、これは塩素消毒に対してアデノウイルスが比較的抵抗性を示すためです。

感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染のほか、汚染された手やタオル、おもちゃなどを介した接触感染も重要な感染経路です。特に保育所や学校などの集団生活の場では、一人の感染者から短期間で多数の人に感染が広がることがあります。

症状と病型について

咽頭結膜熱(プール熱)

咽頭結膜熱は、アデノウイルス感染症の中でも最もよく知られた病型です。突然の高熱(39度から40度)で発症し、強いのどの痛みと目の充血、目やにが特徴的な症状として現れます。

発熱は4日から5日間続くことが多く、その間患者さんは相当な体力を消耗します。のどの痛みは非常に強く、食事や水分摂取が困難になることもあります。目の症状では、充血に加えて涙が多く出たり、まぶたが腫れたりすることもあります。

全身症状として、頭痛、倦怠感、食欲不振などがみられ、リンパ節の腫れを伴うこともあります。症状のピークは発症から2日から3日目頃で、その後徐々に改善していきますが、完全に回復するまでには1週間から10日程度かかることが一般的です。

流行性角結膜炎(はやり目)

流行性角結膜炎は、目の症状が主体となる感染症で、非常に強い感染力を持っています。片方の目から始まることが多いですが、やがて両眼に症状が広がることがほとんどです。

初期症状として目の充血や異物感があり、次第に目やにが増加し、涙が止まらなくなります。まぶたの裏側にぶつぶつができたり、まぶたが大きく腫れたりすることもあります。角膜に小さな濁りができることもあり、この場合は視力に影響が出ることもあります。

症状は発症から1週間から2週間程度続き、特に最初の1週間は症状が強く現れます。他の人への感染力も非常に強いため、症状がある間は学校や職場への出席を控える必要があります。

胃腸炎型

乳幼児に多くみられるのが、アデノウイルスによる胃腸炎です。突然の嘔吐や下痢で始まり、軽度の発熱を伴うことがあります。下痢は水様便から粘液便まで様々で、1日に数回から10回以上の頻回な下痢がみられることもあります。

脱水症状を起こしやすいのが特徴で、特に小さなお子さんでは注意深い観察が必要です。機嫌が悪くなったり、ぐったりしたりする場合は、脱水が進行している可能性があります。

症状は通常5日から7日程度で改善しますが、下痢だけは10日以上続くこともあります。回復期には徐々に食欲が戻り、元気も回復してきます。

その他の病型

アデノウイルスは上記以外にも、肺炎、膀胱炎、髄膜炎など様々な病気を引き起こすことがあります。特に免疫力の低下した方では重篤な症状を示すことがあり、注意が必要です。

診断方法について

臨床診断

アデノウイルス感染症の診断は、症状の特徴と流行状況を考慮した臨床診断が基本となります。咽頭結膜熱では高熱、のどの痛み、目の充血の3つの症状が揃うことが診断の手がかりとなります。

当院では、患者さんの症状の経過を詳しくお聞きし、身体診察により総合的に判断いたします。特にプールの利用歴や、周囲での同様の症状の発生状況などは重要な情報となります。

迅速診断検査

近年では、アデノウイルスの迅速診断キットが普及し、短時間で診断が可能になっています。のどや目から検体を採取し、15分程度で結果が判明します。

ただし、この検査にも限界があり、感染初期や症状が軽い場合は偽陰性となることもあります。そのため、検査結果と臨床症状を総合的に判断することが重要です。

その他の検査

必要に応じて血液検査を行い、炎症反応や脱水の程度を確認することがあります。また、重症例や合併症が疑われる場合は、胸部レントゲン検査なども実施します。

治療方法について

対症療法が中心

アデノウイルス感染症に対する特効薬は現在のところ存在しないため、治療は症状を和らげる対症療法が中心となります。発熱に対しては解熱鎮痛薬を使用し、患者さんの苦痛を軽減します。

のどの痛みが強い場合は、のどスプレーやうがい薬を使用することもあります。目の症状に対しては、人工涙液や抗炎症薬の点眼薬を処方することがあります。

水分補給と栄養管理

特に胃腸炎型では脱水症状の予防が重要な治療目標となります。少量ずつ頻回に水分を摂取し、電解質のバランスを保つことが大切です。経口補水液の使用も効果的です。

食事は消化の良いものから徐々に開始し、症状の改善に合わせて通常の食事に戻していきます。無理な食事摂取は症状を悪化させることがあるため、患者さんの食欲に合わせた対応が重要です。

合併症への対応

細菌による二次感染が疑われる場合は、抗生物質の使用を検討します。また、脱水が進行した場合は、点滴による水分補給が必要になることもあります。

重篤な合併症が発生した場合は、専門医療機関での治療が必要となるため、適切なタイミングでの紹介を行います。

予防と感染対策

基本的な感染予防

アデノウイルス感染症の予防には、手洗いの徹底が最も重要です。特に石鹸を使った丁寧な手洗いは、ウイルスの除去に効果的です。アルコール消毒だけでは不十分な場合があるため、流水と石鹸による手洗いを心がけましょう。

タオルや洗面用具の共用は避け、個人専用のものを使用することも重要な予防策です。特に目の症状がある方との接触では、十分な注意が必要です。

環境の消毒

アデノウイルスは環境中で長時間生存するため、感染者が使用した場所や物品の消毒が重要です。次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)による消毒が効果的で、ドアノブ、テーブル、おもちゃなどの消毒を定期的に行いましょう。

プールでの感染を防ぐためには、適切な塩素濃度の管理と、利用前後のシャワーの励行が重要です。また、体調不良時のプール利用は控えることも大切です。

集団感染の予防

保育所や学校などでは、感染者の早期発見と適切な対応が集団感染の予防に重要です。症状がある間は出席を控え、医師の許可が出るまで登園・登校を見合わせることが必要です。

施設内での感染拡大を防ぐため、手洗い設備の充実や、共用物品の適切な管理、室内の換気なども効果的な対策となります。

当院での対応

診断と検査体制

当院では、アデノウイルス感染症が疑われる患者さんに対して、迅速診断検査を含む適切な検査を実施いたします。症状の特徴や経過から総合的に判断し、正確な診断に努めています。

検査結果については患者さんにわかりやすく説明し、今後の治療方針や注意点について詳しくお話しいたします。特に感染力の強い病型については、感染拡大防止のための具体的な指導も行います。

症状に応じた治療

患者さんの年齢や症状の程度に応じて、最適な対症療法を提供いたします。発熱や痛みに対する薬物療法から、脱水予防のための指導まで、きめ細かな治療を心がけています。

症状が重い場合や合併症が疑われる場合は、必要に応じて点滴治療や専門医療機関への紹介も行います。患者さんの安全を最優先に、適切な医療を提供いたします。

感染対策指導

家庭や職場、学校での感染拡大を防ぐため、具体的な感染対策についてご指導いたします。いつから通常の生活に戻れるかについても、症状の改善状況を確認しながら適切にお伝えします。

特に流行性角結膜炎の場合は、感染力が非常に強いため、詳細な注意事項をお話しし、他の方への感染防止に努めていただいています。

まとめ

アデノウイルス感染症は、多彩な症状を示す感染症で、特に夏場に流行しやすい特徴があります。特効薬はありませんが、適切な対症療法により症状の軽減は可能です。最も重要なのは、感染拡大の防止と合併症の早期発見です。

以下のような症状がある場合は、アデノウイルス感染症の可能性を考慮して当院にご相談ください。

高熱とのどの痛み、目の充血が同時にある場合、強い目の症状で涙や目やにが多い状態、乳幼児の嘔吐や下痢が続いている場合、プール利用後に体調不良が始まった場合、これらの症状がみられる時は、適切な診断と治療のために早めの受診をお勧めします。当院では、アデノウイルス感染症の診断から治療、感染対策まで総合的にサポートいたします。症状でお困りの方や、感染症に関するご心配がございましたら、お気軽にご相談ください。患者さん一人ひとりの状態に合わせて、丁寧で適切な医療を提供いたします。

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