PSC(原発性硬化性胆管炎)

原発性硬化性胆管炎(PSC:Primary Sclerosing Cholangitis)は、肝内外の胆管に慢性的な炎症と線維化が生じ、胆管の狭窄や閉塞を来す原因不明の疾患です。進行性の病気で、最終的には肝硬変や肝不全に至る可能性があります。比較的稀な疾患ですが、炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎との合併率が高いことが特徴です。

男性に多く、30-50歳代での発症が多くみられます。根治的な内科治療は確立されておらず、進行例では肝移植が唯一の根治療法となります。早期診断と適切な管理により、病気の進行を遅らせ、生活の質を保つことが治療の目標となります。

PSC(原発性硬化性胆管炎)とは

疾患の特徴

PSCは、肝内外の胆管に慢性炎症が起こり、胆管壁の線維化と狭窄が進行する疾患です。胆汁の流れが障害されることで、肝臓内に胆汁が停滞し、肝細胞の障害と肝線維化が進行します。

病変は胆管系全体に及ぶことが多く、肝内胆管のみに病変が限局する小胆管型PSCと、肝内外胆管の両方に病変がある大胆管型PSCに分類されます。日本では小胆管型が比較的多いとされています。

自己免疫的要素

PSCの発症には自己免疫機序の関与が示唆されています。胆管上皮細胞に対する自己免疫反応により、慢性的な炎症が持続すると考えられており、他の自己免疫疾患との合併も多くみられます。

遺伝的素因も関与しており、特定のHLA型を持つ人に発症しやすいことが知られています。また、環境因子との相互作用により発症に至ると考えられています。

症状について

初期症状

PSCの初期は無症状のことが多く、健康診断での肝機能異常や画像検査の異常により発見されることがほとんどです。症状がある場合でも、全身倦怠感、易疲労感などの非特異的な症状が中心となります。

右上腹部の鈍痛や不快感を訴える患者さんもいますが、これらの症状は他の肝胆道疾患でもみられるため、PSC特有の症状とは言えません。

進行期の症状

病気が進行すると、胆汁の流れの障害により黄疸が出現します。皮膚や白眼が黄色くなり、尿の色も濃くなります。また、胆汁酸の腸管への流入減少により、脂肪の消化吸収が悪くなり、脂肪便や体重減少がみられることもあります。

胆汁うっ滞により皮膚のかゆみ(掻痒感)が強くなることも特徴的な症状の一つです。このかゆみは非常に強く、患者さんの生活の質を大きく低下させることがあります。

合併症による症状

PSCの進行により門脈圧亢進症を来すと、食道静脈瘤、脾腫、腹水などの症状が現れます。また、胆管炎を合併した場合は、発熱、悪寒、腹痛などの急性症状がみられます。

胆管癌を合併することもあり、この場合は腹痛、体重減少、黄疸の増強などの症状が出現します。

合併疾患について

炎症性腸疾患との関連

PSC患者さんの約70-80%に炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎の合併がみられます。逆に、潰瘍性大腸炎患者さんの約5-10%にPSCが合併するとされています。

炎症性腸疾患の症状として、下痢、血便、腹痛、発熱などがみられ、PSCの症状と並行して管理が必要になります。

その他の自己免疫疾患

甲状腺疾患、1型糖尿病、セリアック病、関節リウマチなどの自己免疫疾患を合併することがあります。これらの疾患の症状も併せて評価し、総合的な管理が必要です。

診断について

血液検査

PSCの診断において、肝機能検査が重要な役割を果たします。ALP(アルカリフォスファターゼ)、γ-GTPの著明な上昇が特徴的で、これらは胆汁うっ滞を反映します。

ALT、ASTも上昇しますが、ALPやγ-GTPほど顕著ではありません。ビリルビン値の上昇は病気の進行を示す指標となります。

自己抗体

p-ANCA(抗好中球細胞質抗体)が約70%の患者さんで陽性となりますが、PSCに特異的な抗体ではありません。抗ミトコンドリア抗体は通常陰性で、原発性胆汁性胆管炎との鑑別に有用です。

画像検査

MRCP(MR胆管膵管撮影)は、PSCの診断において最も重要な検査です。胆管の不規則な狭窄と拡張により「数珠状」の変化が特徴的に観察されます。

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)では、より詳細な胆管像が得られますが、侵襲的検査のため、診断困難例や治療的介入が必要な場合に限定されます。

肝生検

小胆管型PSCでは、MRCPで異常が検出されないため、肝生検による組織学的診断が重要です。胆管周囲の線維化、胆管の消失、門脈域の炎症などの所見がみられます。

治療について

内科的治療

現在のところ、PSCの進行を確実に抑制する内科的治療は確立されていません。ウルソデオキシコール酸(ウルソ)が使用されることがありますが、その効果については議論が分かれています。

症状に対する対症療法が治療の中心となり、かゆみに対しては抗ヒスタミン薬や胆汁酸結合樹脂を使用します。脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の不足に対しては補充療法を行います。

内視鏡的治療

胆管狭窄による症状がある場合は、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)による胆管拡張術やステント留置術が行われます。これらの治療により、胆汁の流れを改善し、症状の軽減を図ります。

ただし、これらは根治的治療ではなく、一時的な症状改善を目的とした治療です。

肝移植

進行したPSCに対する唯一の根治的治療は肝移植です。肝不全、コントロール困難な合併症、胆管癌の合併などが移植適応となります。

肝移植後の予後は比較的良好ですが、移植後にPSCが再発することもあります。また、移植後の免疫抑制療法により、新たな合併症のリスクも生じます。

胆管癌の監視

PSC患者さんでは胆管癌の発症リスクが一般人口の約10-15倍高いとされています。定期的な画像検査や腫瘍マーカー(CA19-9等)の測定により、早期発見に努めます。

予後について

病気の進行

PSCは進行性の疾患で、診断から肝移植や死亡までの期間は平均10-20年とされています。ただし、病気の進行速度には個人差が大きく、長期間安定した経過をたどる患者さんもいます。

小胆管型PSCは大胆管型と比較して進行が緩徐な傾向があります。

予後因子

年齢、ビリルビン値、アルブミン値、脾腫の有無などが予後因子として重要です。これらの因子を用いた予後予測モデルも開発されており、治療方針の決定に活用されます。

生活管理について

感染予防

胆管炎のリスクがあるため、発熱時には早期の医療機関受診が重要です。また、侵襲的な処置を受ける際には、予防的抗生物質の投与が検討されます。

栄養管理

脂肪の消化吸収障害により栄養不良を来すことがあるため、適切な栄養管理が重要です。脂溶性ビタミンの補充や、必要に応じて中鎖脂肪酸の摂取が推奨されます。

アルコール制限

肝臓への負担を軽減するため、アルコールの摂取は控えることが推奨されます。

当院での対応

総合的な診断

当院では、PSCが疑われる患者さんに対して、詳細な血液検査により肝機能や自己抗体を評価いたします。MRCP検査の手配も行い、胆管系の詳細な評価を行います。

炎症性腸疾患の合併も考慮し、必要に応じて消化器内科との連携も行います。

病状管理と治療

患者さんの病状に応じた適切な治療を提供いたします。症状に対する対症療法、栄養状態の管理、合併症の予防について総合的にサポートいたします。

定期的な検査により病気の進行を監視し、必要に応じて専門医療機関への紹介や肝移植の相談も行います。

長期的なサポート

PSCは慢性進行性疾患であるため、長期間にわたる管理が必要です。患者さんの生活の質を保ちながら、適切な医療を継続的に提供いたします。

病気に関する不安や疑問にも丁寧にお答えし、患者さんとご家族が安心して治療を続けられるようサポートいたします。

まとめ

PSC(原発性硬化性胆管炎)は進行性の胆管疾患で、根治的な内科治療は確立されていませんが、適切な管理により病気の進行を遅らせ、生活の質を保つことが可能です。早期診断と継続的な治療により、良好な経過が期待できます。

原因不明の肝機能異常、特にALPやγ-GTPの上昇がある方、炎症性腸疾患を合併している方は、PSCの可能性も考慮して当院にご相談ください。当院では、PSCの診断から治療、長期管理まで総合的にサポートいたします。

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