虚血性腸炎は腸に血液を供給する血管の血流が一時的に減少または遮断されることで発症する消化器疾患です。高齢者に多く見られますが、若年層でも発症する可能性があります。このページでは、虚血性腸炎の基本的な情報から当院で受けられる治療法まで、患者さんに役立つ情報をわかりやすくご紹介します。
虚血性腸炎とは
虚血性腸炎は、腸に血液を供給する血管に一時的な血流低下が起こり、腸の組織が酸素や栄養不足に陥ることで炎症を起こす疾患です。主に大腸左側(下行結腸やS状結腸)に発症しやすく、多くの場合は一過性で自然治癒する傾向がありますが、重症化すると腸管の壊死や穿孔といった深刻な合併症を引き起こす可能性もあります。
虚血性腸炎のリスク因子
以下のような方は虚血性腸炎を発症するリスクが高いとされています。
- 65歳以上の高齢者
- 高血圧症の患者さん
- 糖尿病を抱えている方
- 動脈硬化症がある方
- 心臓病(特に不整脈や心不全)の既往がある方
- 血栓症や塞栓症のリスクがある方
- 大腸憩室症の患者さん
- 便秘と下痢を繰り返す過敏性腸症候群の方
- 長距離ランナーなど激しい運動をする方
- 特定の薬剤(血管収縮薬、利尿剤、NSAIDs、経口避妊薬など)を服用している方
虚血性腸炎の症状

虚血性腸炎の症状は突然現れることが特徴です。以下のような症状が見られたら、虚血性腸炎の可能性があります。
主な症状
- 突然の腹痛:左下腹部に限局することが多く、食事と関係なく発生します
- 血便:鮮血や暗赤色の血液が混じった便が見られます
- 下痢:腹痛の後に水様性の下痢が起こることがあります
- 便意切迫:急に強い便意を感じます
- 腹部膨満感:おなかが張った感じがします
- 吐き気・嘔吐:重症例では消化器症状として現れることがあります
- 発熱:炎症に伴い微熱から中等度の発熱を伴うことがあります
注意すべき症状
以下の症状がある場合は重症化の可能性があるため、すぐに当院にお越しください。
- 持続する強い腹痛
- 大量の血便
- 38度以上の高熱
- 冷や汗や顔面蒼白など、ショック症状
- 腹部の張りが強くなる
- 吐き気・嘔吐が止まらない
虚血性腸炎の診断方法

以下の検査を通じて虚血性腸炎の診断を行います。
1. 問診と身体診察
まず、症状の経過や既往歴、服用中の薬剤などについて詳しくお聞きします。腹部の触診では、痛みのある部位や腸管の状態を確認します。
<h3>2. 血液検査
炎症反応(白血球数、CRPなど)の上昇や貧血の有無、電解質バランスなどを調べます。また、腸管の状態を反映する各種マーカーも確認します。
3. 画像検査
- 腹部X線検査:腸管の拡張や遊離ガス像の有無を確認します
- 腹部CT検査:腸管壁の肥厚や周囲の炎症、血管の状態を詳細に評価します
- 腹部超音波検査:腸管壁の肥厚や血流の状態をリアルタイムで観察できます
4. 内視鏡検査
虚血性腸炎の確定診断には大腸内視鏡検査が最も有用です。但し、腹痛などの症状が強い場合や血便の頻度が多い場合は、まずは禁食などの腸管安静を優先致します。当院では最新の内視鏡機器を導入し、患者さんの負担を軽減した検査を提供しています。内視鏡で観察される特徴的な所見としては:
- 粘膜の発赤や浮腫
- 粘膜下出血や潰瘍形成
- 青紫色の縦走する粘膜変化(青紫色の縦縞模様)
必要に応じて内視鏡検査時に生検(組織採取)を行い、より正確な診断につなげます。
虚血性腸炎の治療法
虚血性腸炎の治療は、症状の重症度や患者さんの全身状態によって異なります。当院では、以下のような治療を提供しています。
1. 軽症から中等症の場合(外来治療)
多くの虚血性腸炎は軽症から中等症で、以下の保存的治療で改善します。
絶食・点滴治療
- 腸管の安静を図るため、一時的に絶食とします
- 脱水予防と栄養補給のための点滴治療を行います
- 腹痛や症状が改善したら、徐々に食事を再開します
薬物療法
- 腹痛に対する鎮痛薬(腸管運動を抑制しないタイプ)
- 腸管粘膜保護剤
- 抗菌薬(二次感染予防が必要な場合)
食事指導
症状が落ち着いてきたら、消化のよい食事から徐々に開始します。
2. 重症例の場合(入院治療・連携病院での治療)
以下のような場合は、入院治療や高次医療機関への紹介が必要となります。
- 持続する強い腹痛や発熱
- 腸管壊死や穿孔が疑われる場合
- 大量出血がある場合
- 全身状態が不良の場合
重症例での治療内容
- 絶食・中心静脈栄養管理
- 抗菌薬の静脈内投与
- 必要に応じた外科的治療(腸管切除など)
虚血性腸炎の経過と予後
虚血性腸炎の経過と予後は症状の重症度によって異なります。
軽症から中等症の場合
- 多くは1週間程度で症状が改善します
- 適切な治療で2〜3週間以内に内視鏡所見も正常化することが多いです
- 再発率は10〜20%程度とされています
重症例の場合
- 腸管壊死や穿孔に至った場合は、外科的治療が必要となります
- 高齢者や基礎疾患のある方では、全身状態に影響を及ぼすことがあります
- 適切な治療でも治癒に時間がかかる場合があります
当院を受診すべき症状
以下のような症状がある場合は、当院への受診をお勧めします。
- 突然の腹痛(特に左下腹部痛)
- 血便や下痢
- 腹部膨満感や吐き気
- 過去に虚血性腸炎と診断されたことがある方で、似たような症状が再発した場合
- 高齢者で腹部症状がある場合
- 便通の急激な変化
まとめ
虚血性腸炎は、腸管の血流低下によって引き起こされる疾患で、適切な診断と治療が重要です。多くの場合は保存的治療で改善しますが、重症化すると入院や外科的治療が必要になることもあります。
当院では、最新の医療機器を用いた正確な診断と、患者さん一人ひとりの状態に合わせた適切な治療を提供しています。また、症状が落ち着いた後も再発予防のための生活指導や定期的な経過観察を行っています。
腹痛や血便などの気になる症状がある方は、早めに当院にご相談ください。