C型肝炎

C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により肝臓に炎症が起こる疾患で、慢性化しやすく、長期間放置すると肝硬変や肝癌に進行するリスクの高い重要な感染症です。日本では約150-200万人の感染者がいると推定され、肝癌の約70%がC型肝炎に起因するとされています。

近年、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の開発により治療は劇的に進歩し、95%以上の患者さんでウイルスの完全排除が可能になりました。治療期間も短縮され、副作用も大幅に軽減されたため、早期発見と適切な治療により根治が期待できる疾患となっています。

C型肝炎とは

ウイルスの特徴

C型肝炎ウイルスは、肝細胞に感染して慢性的な炎症を引き起こすRNAウイルスです。ウイルスは変異しやすい性質があり、複数の遺伝子型(ジェノタイプ)に分類されます。日本では1b型と2a型が多く、これらの型により治療反応性が異なることがあります。

ウイルスは主に肝細胞内で増殖し、免疫系による攻撃を巧妙に回避する仕組みを持っているため、感染が慢性化しやすいという特徴があります。また、有効なワクチンが存在しないため、感染予防は行動による対策が中心となります。

感染の成立と経過

C型肝炎ウイルスに感染すると、多くの場合は無症状で経過し、感染に気づかないまま慢性肝炎に移行します。急性肝炎として発症するのは全体の約20-30%で、残りの70-80%は慢性化します。

慢性化した場合、20-30年の長期間をかけて徐々に肝線維化が進行し、最終的に肝硬変や肝癌に至る可能性があります。この間、多くの患者さんは無症状で過ごすため、「沈黙の病気」とも呼ばれています。

感染経路について

血液を介した感染

C型肝炎の主な感染経路は血液感染です。過去には輸血や血液製剤による感染が多くみられましたが、1992年以降はスクリーニング検査の導入により、これらの感染はほぼなくなりました。

現在では、注射器の使い回し、入れ墨、ピアスの穴あけ、鍼治療などの際の不適切な器具使用による感染が問題となっています。また、医療従事者の針刺し事故による感染もあります。

その他の感染経路

母子感染も起こりますが、B型肝炎と比較すると頻度は低く、約5-10%とされています。性行為による感染も可能ですが、こちらも比較的稀で、感染効率は低いとされています。

違法薬物使用時の注射器共用は、現在でも重要な感染経路の一つです。また、医療や美容処置を海外で受けた際の感染例も報告されています。

症状について

急性C型肝炎の症状

急性C型肝炎を発症した場合、感染から6週間から6か月の潜伏期間を経て症状が現れます。全身倦怠感、食欲不振、吐き気、腹部不快感などの非特異的な症状から始まります。

その後、一部の患者さんでは黄疸が出現し、尿の色が濃くなります。しかし、多くの場合は軽症で、風邪や胃腸炎と間違われることも多く、感染に気づかないまま慢性化することがほとんどです。

慢性C型肝炎の症状

慢性C型肝炎の大部分は無症状で経過します。症状がある場合でも、軽度の倦怠感や食欲不振程度のことが多く、日常生活に大きな支障をきたすことは稀です。

そのため、健康診断での肝機能異常や、他の疾患の検査時に偶然発見されることが多くあります。症状がないからといって病気が進行していないわけではなく、定期的な検査による評価が重要です。

進行期の症状

肝硬変に進行すると、腹水、浮腫、黄疸、食道裂孔ヘルニア、肝性脳症などの肝不全症状が現れます。また、肝癌を発症した場合は、腹痛、体重減少、食欲不振などの症状がみられることがあります。

これらの症状が現れる前に、適切な治療によりウイルスを排除することが重要です。

診断について

血液検査による診断

C型肝炎の診断は、血液検査により行われます。HCV抗体検査により、過去または現在のC型肝炎ウイルス感染を調べます。抗体陽性の場合は、HCV-RNA検査により現在のウイルス感染の有無を確認します。

HCV-RNA量(ウイルス量)の測定により、体内のウイルス量を定量化し、治療の必要性や治療効果の判定に用います。また、ウイルスの遺伝子型(ジェノタイプ)の判定も治療薬選択に重要です。

肝機能検査

ALT(GPT)、AST(GOT)などの肝酵素の値により、肝炎の活動性を評価します。これらの値が正常でも、ウイルス量が多い場合は治療適応となることがあります。

アルブミン値、ビリルビン値、プロトロンビン時間などにより肝機能を総合的に評価し、治療方針の決定に役立てます。

線維化の評価

肝硬変への進行度を評価するため、血液検査による線維化マーカーや超音波エラストグラフィなどの非侵襲的検査が用いられます。これらの検査により、肝生検を行わなくても線維化の程度を評価できるようになりました。

画像検査では、腹部超音波検査やCT検査により肝臓の形態変化や肝癌の有無を確認します。

治療について

直接作用型抗ウイルス薬(DAA)

現在のC型肝炎治療は、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)が中心となります。これらの薬剤は、ウイルスの増殖に必要な酵素を直接阻害することで、高い抗ウイルス効果を発揮します。

代表的な薬剤として、ソホスブビル/ベルパタスビル、グレカプレビル/ピブレンタスビルなどの配合錠があります。これらの薬剤により、95%以上の患者さんでウイルスの完全排除(SVR:持続的ウイルス学的反応)が達成できます。

治療期間と効果

DAA治療の期間は、通常8-12週間と短期間です。従来のインターフェロン治療と比較して、治療期間が大幅に短縮され、副作用も軽微になりました。

治療終了から12週間後にHCV-RNAが検出されない場合、ウイルス排除(SVR)と判定され、事実上の治癒とみなされます。SVR達成後の再燃率は1%未満と非常に低く、長期的な治癒が期待できます。

治療適応

現在では、HCV-RNA陽性のすべての患者さんが治療適応となります。肝機能が正常でも、ウイルスが検出される場合は治療が推奨されます。

年齢制限もなく、高齢者でも安全に治療を受けることができます。また、肝硬変の患者さんでも、代償性であれば外来治療が可能です。

治療後の管理

ウイルス排除後の経過観察

SVR達成後も、肝線維化の程度に応じて定期的な経過観察が必要です。線維化が軽度の場合は、年1-2回の検査で十分ですが、肝硬変の患者さんでは肝癌のスクリーニングが重要になります。

ウイルス排除により肝炎の進行は停止しますが、既存の線維化が完全に改善するには時間がかかります。また、肝硬変の患者さんでは、ウイルス排除後も肝癌発症のリスクが残存します。

生活習慣の改善

ウイルス排除後も、肝臓の健康維持のため生活習慣の改善が重要です。過度の飲酒は肝線維化を促進するため、節酒または禁酒が推奨されます。

適度な運動、体重管理、バランスの取れた食事も肝機能の改善に効果的です。また、他の肝炎ウイルス(A型、B型)に対するワクチン接種も推奨されます。

予防について

感染予防対策

C型肝炎には有効なワクチンが存在しないため、感染予防は行動による対策が中心となります。他人の血液に接触する可能性のある行為を避けることが重要です。

歯ブラシ、カミソリ、爪切りなどの個人用品は共用せず、入れ墨やピアスを行う際は、使い捨て器具を使用する清潔な施設を選択します。

医療現場での予防

医療従事者は、針刺し事故防止のため標準予防策を徹底します。事故発生時は速やかに対処し、定期的な検査により感染の有無を確認します。

早期発見の重要性

40歳以上で一度も検査を受けたことがない方は、C型肝炎検査を受けることが推奨されます。多くの自治体で無料検査が実施されており、早期発見により根治が可能です。

当院での対応

診断と評価

当院では、C型肝炎の検査から診断まで総合的に行います。HCV抗体検査、HCV-RNA検査、ウイルス量測定、遺伝子型判定などにより、正確な診断と治療方針の決定を行います。

肝機能評価や線維化の程度判定も適切に実施し、患者さんの病状を詳しくご説明いたします。

最新の治療提供

最新のDAA製剤による治療を提供し、患者さんの状態に最適な治療法を選択いたします。治療中は定期的な検査により効果と安全性を監視し、必要に応じて治療調整を行います。

治療に関する不安や疑問にも丁寧にお答えし、安心して治療を受けられるようサポートいたします。

長期管理とサポート

SVR達成後も、患者さんの線維化の程度に応じた適切な経過観察を継続いたします。肝癌のスクリーニング検査も定期的に実施し、早期発見に努めます。

生活習慣の改善についても具体的にアドバイスし、肝臓の健康維持をサポートいたします。

まとめ

C型肝炎は現在では治癒可能な疾患となりました。最新の治療により95%以上の患者さんでウイルスの完全排除が可能で、治療期間も短く副作用も軽微です。早期発見と適切な治療により、肝硬変や肝癌への進行を防ぐことができます。肝機能異常を指摘された方、C型肝炎検査を希望される方、治療をご希望の方は、当院にご相談ください。当院では、C型肝炎の診断から最新治療、治療後の長期管理まで総合的にサポートいたします。

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