胆石は、胆嚢や胆管内にできる結石で、日本人の約10-15%が保有しているとされる非常に身近な疾患です。多くの場合は無症状で経過しますが、胆石が胆嚢の出口を塞いだり、胆管に落下したりすると激しい痛みや胆嚢炎、胆管炎などの合併症を引き起こすことがあります。
「40歳以上の太った女性」に多いとされる典型像がありますが、近年では食生活の変化により若年者や男性にも増加しています。適切な診断により治療方針を決定し、必要に応じて手術により根治的治療が可能な疾患です。
胆石とは
胆石形成のメカニズム
胆石は、胆汁中の成分が結晶化して固まったものです。胆汁は肝臓で作られ、胆嚢で濃縮・貯蔵され、食事に伴って十二指腸に分泌されて脂肪の消化を助けます。この胆汁の成分バランスが崩れたり、胆嚢の収縮機能が低下したりすると胆石が形成されます。
胆石形成には、胆汁中のコレステロールの過飽和、胆嚢の運動機能低下、細菌感染などが関与します。これらの要因が複合的に作用することで、徐々に結石が成長していきます。
胆石の種類
胆石は成分により、コレステロール結石、ビリルビンカルシウム結石(色素結石)、混合石に分類されます。日本人では約75%がコレステロール系結石で、食生活の欧米化により増加傾向にあります。
コレステロール結石は黄白色で比較的大きく、レントゲンでは写りにくい特徴があります。色素結石は黒色や茶褐色で小さく、レントゲンでも確認できることが多くあります。
症状について
無症状性胆石
胆石保有者の約70-80%は生涯無症状で経過します。健康診断の腹部超音波検査で偶然発見されることが多く、「サイレントストーン」と呼ばれます。
無症状であっても胆石は存在しており、何らかのきっかけで症状が出現する可能性があります。しかし、無症状の胆石に対する予防的手術は一般的には推奨されていません。
胆石発作(胆仙痛)
胆石が胆嚢の出口(胆嚢頸部)に嵌頓すると、激しい右上腹部痛が生じます。これを胆石発作または胆仙痛と呼びます。痛みは突然始まることが多く、「今まで経験したことのない痛み」と表現されるほど激烈です。
痛みは右上腹部からみぞおち、背中、右肩にかけて放散し、持続性で波のように強弱を繰り返します。脂肪分の多い食事後や夜間から早朝にかけて起こりやすい傾向があります。
随伴症状
胆石発作に伴い、吐き気や嘔吐がみられることが多くあります。痛みが強いため冷や汗をかいたり、じっとしていられなくなったりします。
発熱は通常みられませんが、胆嚢炎を合併した場合は38度以上の発熱を伴います。黄疸が出現した場合は、胆石が総胆管に落下した可能性があります。
危険因子について
年齢と性別
胆石の頻度は年齢とともに増加し、40歳以降で急激に増加します。女性は男性の約2-3倍発症しやすく、特に妊娠可能年齢の女性に多くみられます。これは女性ホルモン(エストロゲン)が胆汁中コレステロール濃度を上昇させるためです。
閉経後は男女差が縮小しますが、それでも女性の方が多い傾向が続きます。
肥満と食生活

肥満は胆石形成の重要な危険因子で、BMI30以上では胆石のリスクが約6倍に増加します。内臓脂肪の蓄積により胆汁中コレステロール濃度が上昇し、胆石形成が促進されます。
高脂肪食、高コレステロール食、糖質の過剰摂取も胆石形成を促進します。一方、急激な体重減少も胆石形成のリスクとなります。
その他の要因
糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病は胆石のリスクを高めます。また、長期間の絶食、経静脈栄養、薬剤(経口避妊薬、ホルモン補充療法等)も胆石形成に関与します。
遺伝的要因も重要で、家族歴がある場合はリスクが高くなります。
診断について
腹部超音波検査
胆石の診断において最も有用で、第一選択となる検査です。胆嚢内の胆石を高い精度で検出でき、結石の大きさ、個数、胆嚢壁の状態も同時に評価できます。
検査は非侵襲的で、妊婦でも安全に実施できます。ただし、検査前の絶食が必要で、腸管ガスにより観察が困難な場合もあります。
CT検査
胆石の約15%は石灰化しているためCTで描出されますが、多くのコレステロール結石はCTでは写りません。CT検査の利点は、胆嚢以外の腹部臓器も同時に評価できることです。
胆嚢炎や胆管炎の合併診断、他疾患との鑑別に有用です。
MRI検査・MRCP
MRI検査では胆石の検出は困難ですが、MRCP(MR胆管膵管撮影)により胆管の詳細な評価が可能です。総胆管結石の診断や胆管の形態評価に優れています。
造影剤を使用しないため、腎機能低下のある患者さんでも安全に実施できます。
血液検査
無症状の胆石では血液検査は正常ですが、胆嚢炎や胆管炎を合併した場合は白血球増加、CRP上昇、肝酵素上昇、ビリルビン上昇などの異常がみられます。
これらの検査結果は、胆石による合併症の有無や重症度の判定に重要です。
治療について
無症状胆石の管理
無症状の胆石は、定期的な経過観察が基本となります。年1-2回の腹部超音波検査により胆石の変化を監視し、症状出現の有無を確認します。
胆石が大きい場合(3cm以上)や胆嚢壁の肥厚がある場合は、胆嚢癌のリスクがあるため手術を検討することもあります。
症状のある胆石の治療
胆石発作を起こした場合は、根治的治療として手術が推奨されます。現在の標準術式は腹腔鏡下胆嚢摘出術で、開腹手術と比較して創が小さく、回復が早いという利点があります。
手術のタイミングは、急性炎症期を避けて待機的に行うことが一般的ですが、症状や患者さんの状態により調整されます。
内科的治療
手術が困難な場合の選択肢として、胆石溶解療法があります。ウルソデオキシコール酸(ウルソ)の内服により、小さなコレステロール結石の溶解を図ります。
ただし、効果は限定的で、溶解率は約30%程度です。また、治療中止により再発することが多いため、根治的治療とは言えません。
体外衝撃波砕石術
体外から衝撃波を結石に集中させて砕く治療法もありますが、適応が限られており、現在では胆石治療としてはあまり行われていません。
合併症について
急性胆嚢炎
胆石が胆嚢頸部に嵌頓することで胆汁の流出が阻害され、胆嚢内圧の上昇と細菌感染により急性胆嚢炎が発症します。右上腹部痛、発熱、白血球増加が三主徴となります。
重症化すると胆嚢壊疽や穿孔を起こすことがあり、緊急手術が必要になる場合もあります。
総胆管結石
胆嚢内の胆石が総胆管に落下すると、胆管閉塞による黄疸や胆管炎を引き起こします。胆管炎では高熱、黄疸、腹痛のCharcot三徴がみられ、重篤な場合は敗血症に至ることもあります。
急性膵炎
総胆管結石が膵管の出口付近に嵌頓すると、膵液の流出障害により急性膵炎を発症することがあります。激しい腹痛と膵酵素の上昇がみられ、重症化すると生命に関わることもあります。
予防について
食生活の改善
規則正しい食事、適切なカロリー制限、脂肪分の適度な摂取が胆石予防に重要です。極端な低脂肪食は胆嚢の収縮機能を低下させるため、適度な脂肪摂取も必要です。
食物繊維を多く含む野菜や果物の摂取、魚類の摂取増加も予防効果があるとされています。
体重管理

適正体重の維持が重要ですが、急激な減量は胆石形成を促進するため、月1-2kg程度の緩やかな減量を心がけます。
定期的な運動も胆嚢の収縮機能を維持し、胆石予防に効果的です。
生活習慣の改善
規則正しい生活リズム、適度な運動、ストレス管理も胆石予防に役立ちます。長時間の絶食は避け、1日3食の規則正しい食事を心がけます。
当院での対応
正確な診断
当院では、胆石が疑われる患者さんに対して、腹部超音波検査を中心とした適切な画像診断により正確な診断を行います。胆石の大きさ、個数、部位を詳しく評価し、合併症の有無も確認いたします。
血液検査と合わせて総合的に評価し、患者さんの状態を正確に把握いたします。
治療方針の決定
無症状胆石から症状のある胆石まで、患者さんの状態に応じた最適な治療方針をご提案いたします。手術が必要な場合は、適切な専門医療機関への紹介を行います。
内科的治療が適応となる場合は、当院で継続的に治療を行います。
継続的な管理
胆石の患者さんには、定期的な検査による経過観察を行います。症状の変化や合併症の早期発見に努め、適切なタイミングでの治療介入を行います。
生活指導も詳しく行い、胆石症の進行予防や新たな胆石形成の予防をサポートいたします。
まとめ
胆石は身近な疾患ですが、症状が出現した場合は適切な治療が必要です。多くの場合、腹腔鏡手術により根治的治療が可能で、良好な予後が期待できます。右上腹部痛、特に脂肪分の多い食事後の激しい痛みがある場合や、健康診断で胆石を指摘された場合は、当院にご相談ください。当院では、胆石の診断から治療方針の決定、専門医療機関との連携まで総合的にサポートいたします。