胆嚢ポリープは、胆嚢の内壁から胆嚢内腔に向かって突出した病変の総称で、健康診断の腹部超音波検査で発見されることが多い疾患です。日本人の約5~10%に認められる比較的頻度の高い病変で、多くの場合は良性で経過観察となりますが、一部には悪性化の可能性があるため適切な評価と管理が重要です。
ほとんどの胆嚢ポリープは無症状で、偶然発見されることがほとんどです。大きさや形態により悪性度が異なるため、定期的な画像検査による経過観察や、必要に応じた手術治療により適切に管理することが可能な疾患です。
胆嚢ポリープとは
病変の特徴
胆嚢ポリープは、胆嚢粘膜から胆嚢内腔に向かって隆起した病変です。大きさは数ミリから数センチまで様々で、単発性のものから多発性のものまであります。ポリープ様病変には真のポリープ(腫瘍性病変)と偽ポリープ(非腫瘍性病変)が含まれます。
画像検査では胆嚢壁から突出した病変として観察され、胆石と異なり体位変換によって移動しない固定性病変であることが特徴です。
分類と種類
胆嚢ポリープは組織学的に、腫瘍性と非腫瘍性に大別されます。非腫瘍性では、コレステロールポリープが最も多く全体の約60-70%を占めます。その他に炎症性ポリープ、過形成性ポリープがあります。
腫瘍性では、良性の腺腫と悪性の腺癌があります。腺腫は約10%程度で、腺癌への移行の可能性があるため注意深い経過観察が必要です。
症状について
無症状性
胆嚢ポリープの大部分は無症状で経過し、健康診断や他の疾患の検査時に偶然発見されることがほとんどです。ポリープ自体が症状を引き起こすことは稀で、多くの患者さんは診断されるまで全く自覚症状がありません。
この無症状性のため、定期的な健康診断による早期発見が重要となります。
症状を伴う場合
ポリープが大きくなったり、胆嚢の機能に影響を与えたりする場合には、右上腹部の鈍痛や不快感を感じることがあります。また、消化不良や食後の腹部膨満感を訴える患者さんもいます。
ただし、これらの症状は他の胆嚢疾患や消化器疾患でもみられるため、ポリープ特有の症状とは言えません。症状がある場合は、他の疾患の合併も考慮して総合的な評価が必要です。
合併症による症状
稀に大きなポリープが胆嚢頸部を閉塞して胆嚢炎を引き起こしたり、茎部分で捻転を起こしたりすることがあります。この場合は急性腹痛、発熱、吐き気などの症状が現れ、緊急性を要する場合もあります。
原因と危険因子について
コレステロール代謝異常
最も多いコレステロールポリープは、胆嚢粘膜にコレステロールが沈着することで形成されます。高脂血症、肥満、糖尿病などの代謝異常がある方に多くみられる傾向があります。
食生活の欧米化により、日本人でもコレステロールポリープの頻度が増加していると考えられています。
年齢と性別
胆嚢ポリープは中年以降に多くみられ、特に40-60歳代での発見頻度が高くなります。男女比はほぼ同等ですが、コレステロールポリープは男性にやや多い傾向があります。
生活習慣要因
高脂肪食、高コレステロール食、過度の飲酒、運動不足などの生活習慣が胆嚢ポリープの形成に関与すると考えられています。また、急激な体重変動も影響する可能性があります。
遺伝的要因
家族歴がある場合は発症リスクがやや高くなることが報告されており、遺伝的素因の関与も示唆されています。
診断について
腹部超音波検査
胆嚢ポリープの診断において最も重要で、第一選択となる検査です。胆嚢壁から胆嚢内腔に突出した固定性病変として描出され、体位変換によって移動しないことで胆石と鑑別されます。
ポリープの大きさ、個数、性状(表面の平滑性、内部エコー等)を詳細に評価でき、悪性度の推定にも有用です。検査は非侵襲的で反復検査が容易なため、経過観察にも適しています。
CT検査
造影CT検査では、ポリープの造影効果により血流の評価が可能です。悪性が疑われる場合や、超音波検査で詳細な評価が困難な場合に実施されます。
また、胆嚢以外の腹部臓器の評価も同時に行え、他疾患との鑑別にも有用です。
MRI検査・MRCP

MRI検査では、ポリープの内部構造をより詳細に評価できます。MRCP(MR胆管膵管撮影)により胆管系の評価も可能で、胆嚢癌が疑われる場合の病期診断にも有用です。
内視鏡検査
確定診断が困難な場合や手術前の詳細評価が必要な場合は、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)や超音波内視鏡検査(EUS)が実施されることもあります。
治療について
経過観察の適応
10mm未満の胆嚢ポリープで、悪性を示唆する所見がない場合は経過観察が基本となります。定期的な腹部超音波検査により、大きさの変化や性状の変化を監視します。
経過観察の間隔は、ポリープの大きさや性状により決定されますが、通常6か月から1年ごとの検査が推奨されます。
手術適応
以下の場合は手術治療が検討されます:
10mm以上のポリープ、短期間での急速な増大がみられるポリープ、単発性で広基性のポリープ、60歳以上の患者さんのポリープ、胆石を合併するポリープなどが手術適応の目安となります。
手術方法
胆嚢ポリープの標準的な手術は腹腔鏡下胆嚢摘出術です。開腹手術と比較して創が小さく、術後の回復が早いという利点があります。
悪性が強く疑われる場合や、術中迅速病理検査で悪性と診断された場合は、拡大手術(肝床切除、リンパ節郭清等)が追加されることもあります。
内科的治療
コレステロールポリープに対しては、ウルソデオキシコール酸の内服により縮小効果が期待できる場合があります。ただし、効果は限定的で根治的治療にはなりません。
生活習慣の改善(食事療法、運動療法、体重管理等)も補助的な治療として重要です。
悪性化について
悪性化のリスク
胆嚢ポリープの悪性化率は全体では1-5%程度と低いものの、大きさが10mmを超えると悪性化のリスクが高まります。15mm以上では約50%、20mm以上では約80%に悪性を認めるという報告もあります。
年齢(60歳以上)、単発性、広基性、胆石合併なども悪性化のリスク因子とされています。
早期発見の重要性
胆嚢癌の予後は一般的に不良ですが、早期発見・早期治療により良好な予後が期待できます。定期的な経過観察により、悪性化の兆候を早期に発見することが重要です。
予防について
生活習慣の改善
コレステロールポリープの予防には、生活習慣の改善が重要です。バランスの取れた食事、適度な運動、適正体重の維持を心がけます。
高脂肪食、高コレステロール食を控え、食物繊維を多く含む野菜や果物を積極的に摂取することが推奨されます。
定期検診
40歳以降は定期的な腹部超音波検査により、胆嚢ポリープの早期発見に努めることが重要です。家族歴がある方や、生活習慣病のある方は特に注意深い検診が必要です。
当院での対応
精密な診断
当院クリニックでは、胆嚢ポリープが発見された患者さんに対して、高精度な腹部超音波検査によりポリープの詳細な評価を行います。大きさ、個数、性状を正確に測定し、悪性度のリスク評価を行います。
必要に応じてCT検査やMRI検査の手配も行い、総合的な診断を提供いたします。
個別化された管理
患者さんの年齢、ポリープの特徴、併存疾患を総合的に評価し、最適な管理方針を決定いたします。経過観察が適切な場合は適切な間隔での検査スケジュールを立て、手術が必要な場合は専門医療機関への紹介を行います。
継続的な経過観察
経過観察となった患者さんには、定期的な検査によりポリープの変化を監視いたします。わずかな変化も見逃さないよう、前回の検査結果と比較しながら慎重に評価いたします。
患者さんの不安や疑問にも丁寧にお答えし、安心して経過観察を続けられるようサポートいたします。
生活指導
生活習慣の改善により、新たなポリープの形成予防や既存ポリープの進行抑制を図ります。食事療法、運動療法、体重管理について、患者さんの生活スタイルに合わせた実践的なアドバイスを提供いたします。
まとめ

胆嚢ポリープは多くの場合良性で経過観察となりますが、大きさや性状により悪性化のリスクがあるため、適切な評価と管理が重要です。定期的な検査による経過観察と、必要に応じた適切なタイミングでの手術治療により、良好な予後が期待できます。
健康診断で胆嚢ポリープを指摘された方、腹部の不快感が続く方は、当院にご相談ください。当院では、胆嚢ポリープの正確な診断から適切な管理方針の決定、継続的な経過観察まで総合的にサポートいたします。